<結論> 視線計測とアンケート分析を用いた、巻数の多い漫画と少ない漫画の比較

研究者:梅木 夕夏

結果の考察

◎アンケートから
6問それぞれの質問の結果を考察する。

「①キャラクターの行動の印象は強かったですか?」では、0.4pt差と大きく差はつかなかった。

コメントでは強く印象に残った点として、どちらの作品も同じくらい、

「学校のクラスメイトカツキを救うため、敵に立ち向かうシーン」
「主人公がドジなどころ、園長の行動」

などメインキャラクターの性格や立場、そして印象的なシーンが挙がっていた。

あまり印象に残らなかった点についての質問では、「僕のヒーローアカデミア」は11人中3人が印象に残らなかった点を挙げており

「他のヒーローの印象は非常に薄い」
「病院のシーン」
「背景はあまり見てなかった」

というものだった。

一方「逢魔ケ刻動物園」では11人中7人が印象に残らなかった点を挙げていた。
その内容は主人公・蒼井華と、中盤以降登場する強盗団がほぼ半分ずつだった。
「逢魔ケ刻動物園」の主人公・蒼井華は強く印象に残った点のコメントでも複数言及されており、決して印象が弱かったとは言えない。しかし、メインキャラクターの一人で
物語を引っ張るキャラクター・椎名に振り回される立場上、蒼井華自身のキャラクターの印象が椎名と比べて弱まった可能性がある。 強盗団については、別の質問へのコメントの中でも言及があり

「人が全然来ていないのになぜ泥棒たちはこの動物園がしゃべる動物たちがいることを知ったのか。」
「普通喋ったり変身する動物を見たら警戒すると思うが、すぐに金儲けに走った悪役御一行の考えに少し疑問を思った」

など疑問が寄せられ、説明不足だった可能性がある。
また「僕のヒーローアカデミア」での敵は一人で、第1話の中で登場回数3回だったことに対し、「逢魔ケ刻動物園」では敵が7人、登場回数1回であり、敵の数が多く個より集団の印象になったことと、登場回数が少なかったことで、敵のことを理解しづらかったのではないか。

次に「②キャラクターの行動はわかりやすかったですか?」の質問も、0.5pt差とスコアに差はあまりなかった。
わかりやすかった点では、どちらも同じくらい、メインキャラクターの性格、どういう行動をしたかについて

「デクのどんなに無理だと言われても諦めきれずに夢へ向かって頑張るところ」
「園長の行動理念である、面白いことしかしないというのはわかりやすかった」

など書かれていた。
疑問に感じた点のコメントでは「僕のヒーローアカデミア」で11人中5人、「逢魔ケ刻動物園」では11人中7人が回答していた。

内容では、「僕のヒーローアカデミア」は

「個性にどれくらいの種類があるのか」

など世界観に関する質問が3つ、その他は

「なぜ幼馴染の子は主人公をいじめているのか」
「その他ヒーローの行動は、売名活動のような印象だった」

というキャラクターに対する疑問が2つだった。一方「逢魔ケ刻動物園」では

「なぜ飼育員だけに任せっぱなしなのか」
「他の動物たちの変身後の姿や性格がよく覚えてなかった」
「主人公の行動理念もわかりやすいのだが、背景となる部分の説明が薄く、受け入れにくかった」

など、7つの回答すべてがキャラクターに対する疑問であった。うち、4つがメインキャラクターである主人公・蒼井華と園長・椎名についてであった。
上記の結果を踏まえると、「逢魔ケ刻動物園」では「僕のヒーローアカデミア」と比べて、メインキャラクターの行動に対して読者が理解できていない部分が多かったと言える。

「③キャラクターの欲求は強かったですか?」では0.7ptと、やや差がついた。
強く感じた点へのコメントでは「僕のヒーローアカデミア」は11人中8人、「逢魔ケ刻動物園」は11人中10人が主人公の思いについて

「デクのヒーローへのあこがれ」
「主人公ハナの変わりたいという思い。」

などコメントしていた。
一方あまり強く感じなかった点として、「僕のヒーローアカデミア」は4人、「逢魔ケ刻動物園」では6人が回答していた。

「僕のヒーローアカデミア」の内容は

「オールマイトと出久以外はよくわからなかった」
「他のクラスメートの個性」
「悪役がなぜ暴れているのかがあまりわからなかった」

などメインキャラクター以外についてであった。

「逢魔ケ刻動物園」に対してのコメントは

「兎人間椎名の目的」
「変えたいという意思は強いが、まだ流されてさせられている所が大きいのかなと思います。」
「悪役の動機や感情」

というキャラクターに対する疑問が2つだった。

一方「逢魔ケ刻動物園」では

「なぜ飼育員だけに任せっぱなしなのか」
「他の動物たちの変身後の姿や性格がよく覚えてなかった」
「主人公の行動理念もわかりやすいのだが、背景となる部分の説明が薄く、受け入れにくかった」

などで、メインキャラクターに対するコメントが4つ、その他の悪役や動物に対するコメントが2つであった。
「僕のヒーローアカデミア」ではメインキャラクターについて欲求を強く感じなかった点が書かれていなかったことを踏まえると、「逢魔ケ刻動物園」では「僕のヒーローアカデミア」と比べて、メインキャラクターの欲求を読者が強くは感じづらかったと言える。

「④キャラクターに感情移入できたシーンはどのくらいありましたか?」の質問は0.6pt差で、やや差がついた。
感情移入できたシーンについては、どちらも同じくらい、

「ヒーローに対する憧れ。」
「主人公がお前が必要じゃと言われたシーン」

など主に主人公の感情の動きに沿うコメントが書かれていた。
感情移入しづらかったシーンについては、「僕のヒーローアカデミア」では4人、「逢魔ケ刻動物園」では7人が回答していた。

「僕のヒーローアカデミア」の内容は

「他のヒーローが出てくるシーン」
「幼馴染の同級生に来世〜の冗談を言われたときのキレ方」

などで、メインキャラクターに対するものが1つ、その他が3つであった。

一方「逢魔ケ刻動物園」では

「主人公の行動全般」
「全体的に。単純明快な主張の勢いが強すぎる。」
「園長の自己中行動全般」

などがあり、メインキャラクターに対するものが6つ、その他1つであった。
「僕のヒーローアカデミア」ではメインキャラクターについて感情移入しづらいという言及が1つだけに対し「逢魔ケ刻動物園」では6つあったことを踏まえると、「逢魔ケ刻動物園」では「僕のヒーローアカデミア」と比べて、メインキャラクターに感情移入しづらかった言える。

「⑤キャラクターに対して好感が持てましたか?」の質問では、1ptの差がついた。
好感が持てた点では、「僕のヒーローアカデミア」は11人中8人、「逢魔ケ刻動物園」は11人中10人が

「主人公がはっきり夢を持っているところ、強いヒーローにも弱点があるところ」
「逃げたいけど変わりたいそんな主人公の気持ちに感情を動かされました。」

など、メインキャラクターのエピソードに対してコメントしていた。

一方好感が持てなかった点として、「逢魔ケ刻動物園」では

「兎人間が怖い」
「分かりやすすぎる。」
「同級生達に否定されるシーン」

など8つのコメントがあり、うち5つが園長・椎名や主人公・蒼井華を挙げていた。
「僕のヒーローアカデミア」では好感を持てなかった点にコメントしていたのは3人で、その人物は主人公をいじめる幼馴染・爆豪勝己のみだった。
また、「逢魔ケ刻動物園」のメインキャラクターに対するコメントは賛否が半々ほどだったのに対し、「僕のヒーローアカデミア」のメインキャラクターである主人公・緑谷出久と憧れのヒーロー・オールマイトへの否定意見は全く無かった。
「僕のヒーローアカデミア」では主人公・緑谷出久に暴力的な描写も自己中心的という性格もなく、一般人の目線で応援しやすいキャラクターである。

印象に残った点へのコメントで

「主人公がいじめられっ子で、幼馴染がいじめっ子」
「デクの挫折と、かっちゃんのためにヴィランに向かって走り出したところ」

などがあり、むしろ弱い立場のキャラクターとして読者の興味を誘っている。
また、一貫してヒーローになりたいという欲求に基づいて行動しており、

「デクのどんなに無理だと言われても諦めきれずに夢へ向かって頑張るところ」
「ヒーローに憧れ過ぎてオールマートにしがみついた」

などが、キャラクターの行動がわかりやすかった点として挙げられていた。
欲求の強さに関しては、

「オールマイトの、人を助けるという行動と出久の人を助けたいという欲求がうまくマッチしていて、出久の欲求がより強く感じた」
「主人公の感情表現が、主人公の境遇と合致している。」

などのコメントがあった。主人公の感情表現や他キャラクターとのやり取りを通して強い思いを感じることで、キャラクターの好印象に結びつきやすかったのではないか。

「⑥このマンガをもっと読みたいと思いましたか?」の質問では、「逢魔ケ刻動物園」で

「主人公の今後はあまり期待できない印象だった」

というコメントや「僕のヒーローアカデミア」で

「どうやってヒーローになるんだろうという期待感 個性に種類が豊富そうで面白そう」

で「期待」という言葉が使われていた。 「僕のヒーローアカデミア」へのもっと読みたいと思ったコメントで

「出久がこのあとどうなっていくのか見てみたい オールマイトの今後が見たい」
「主人公のこの先が気になる」
「これからどうなるか、解らない 個性がなくとも本当にヒーローになれるのか」
「主人公の成長を見届けたい」

など、主人公や仲間の今後についての言及が多かったことも踏まえると、作品のメインキャラクターへの印象や、今後キャラクターが何をするのかという「キャラクターへの期待感」が、漫画をもっと読みたいと思うかに大きく影響している可能性がある。
「僕のヒーローアカデミア」のもっと読みたいと思った点のコメントでは、11人中5人が、無個性の主人公がどうやってヒーローになるのか、主人公の今後が気になるという趣旨のコメントをしていた。
一方、「逢魔ケ刻動物園」ではコメントの数は「僕のヒーローアカデミア」と同数だったものの「普通に面白いと思う」など抽象的な答えが多く、具体的に気になる理由を述べたものは1つのみで、「動物たちをもっと見たい」であった。

◎視線の分析

視線の計測ではキャラクターに一番視線が集まりやすかったことを踏まえ、「キャラクターを気になる状態にさせること」が重要であると考える。特に「逢魔ケ刻動物園」の園長・椎名と「僕のヒーローアカデミア」のオールマイトには初登場シーンから、他のキャラクターよりも視線が集まっていた。どちらも見た目のインパクト(椎名はウサギ人間、オールマイトは画風が違う)があり、そのような人物に自然と視線が集まりやすい可能性がある。

キャラクターの行動原理がわかるシーンでよく見られていたのは、「逢魔ケ刻動物園」の園長・椎名が人間だったのに、なぜウサギの姿なってしまったのかという呪いの説明シーンと、「僕のヒーローアカデミア」のオールマイトがガリガリになってしまう理由(過去)が説明されたときであった。驚きがあり、その理由が明かされる際に単純に気になる可能性と、そもそもキャラクターのメタモルフォーゼや過去の話が興味をそそる可能性もある。また、キャラクター(特に主人公)がモノローグで心の内を語っている部分も、じっくりと読んでいる人が多かった。読者は、主人公の考えや感情ををきちんと理解しようと読んでいると考えられる。
前述した変則的なコマは「逢魔ケ刻動物園」に多く、同作に読み返しが多かった。断定はできないが、読者が読む順番を迷っている可能性がある。

他に興味深い点としては、2作品を比べた際に、全体的に「逢魔ケ刻動物園」のほうが一定のスピードで、視線があまり止まることなく読まれていた。「僕のヒーローアカデミア」のほうが、視線がところどころで止まりやすく、読むスピードが変則的だった。印象に残るシーンの多さにおいてヒーローアカデミアが高スコアだということを考えると、印象に残るときは読者は目をしっかり止めて読んでいる可能性がある。

検証結果と今後の課題

今回の実験で、キャラクターの好感度と、続きをもっと読みたい気持ちの点で差が出やすいことがわかった。キャラクターの印象と巻数の関連はありそうだが、まだ2作品の比較では可能性の話にとどまるため、さらに検証していく必要がある。 今後はもっと漫画の種類を増やして実験を重ねて、仮説やアンケートを修正しながらさらに実験を繰り返す。 2018年中にはさらに20人ほどのサンプルを計測し、スポーツ漫画やギャグ漫画においてどんな結果が得られるか検証する。

結論

現時点の結論として、
アンケート結果から、長期連載には「キャラクターの好感」「もっと読みたいと感じること」が重要。次に、「キャラクターへの感情移入度」「キャラクターの欲求を強く感じること」が重要といえる。
視線の計測から、読者が視線を止める部分が多いほど印象に多く残っている可能性がある。
よく目が止まるのが「キャラクターがリアクションしたとき(感情がわかるとき)」「キャラクターの行動原理がわかるとき(過去の話や、モノローグなどで考えがわかるとき)」ということを鑑みて、このようなシーンを多く用意すれば読者の印象に残りやすい可能性がある。

<結論> 視線計測とアンケート分析を用いた、巻数の多い漫画と少ない漫画の比較

研究者:梅木 夕夏

結果の考察

◎アンケートから
6問それぞれの質問の結果を考察する。

「①キャラクターの行動の印象は強かったですか?」では、0.4pt差と大きく差はつかなかった。

コメントでは強く印象に残った点として、どちらの作品も同じくらい、

「学校のクラスメイトカツキを救うため、敵に立ち向かうシーン」
「主人公がドジなどころ、園長の行動」

などメインキャラクターの性格や立場、そして印象的なシーンが挙がっていた。

あまり印象に残らなかった点についての質問では、「僕のヒーローアカデミア」は11人中3人が印象に残らなかった点を挙げており

「他のヒーローの印象は非常に薄い」
「病院のシーン」
「背景はあまり見てなかった」

というものだった。

一方「逢魔ケ刻動物園」では11人中7人が印象に残らなかった点を挙げていた。
その内容は主人公・蒼井華と、中盤以降登場する強盗団がほぼ半分ずつだった。
「逢魔ケ刻動物園」の主人公・蒼井華は強く印象に残った点のコメントでも複数言及されており、決して印象が弱かったとは言えない。しかし、メインキャラクターの一人で
物語を引っ張るキャラクター・椎名に振り回される立場上、蒼井華自身のキャラクターの印象が椎名と比べて弱まった可能性がある。 強盗団については、別の質問へのコメントの中でも言及があり

「人が全然来ていないのになぜ泥棒たちはこの動物園がしゃべる動物たちがいることを知ったのか。」
「普通喋ったり変身する動物を見たら警戒すると思うが、すぐに金儲けに走った悪役御一行の考えに少し疑問を思った」

など疑問が寄せられ、説明不足だった可能性がある。
また「僕のヒーローアカデミア」での敵は一人で、第1話の中で登場回数3回だったことに対し、「逢魔ケ刻動物園」では敵が7人、登場回数1回であり、敵の数が多く個より集団の印象になったことと、登場回数が少なかったことで、敵のことを理解しづらかったのではないか。

次に「②キャラクターの行動はわかりやすかったですか?」の質問も、0.5pt差とスコアに差はあまりなかった。
わかりやすかった点では、どちらも同じくらい、メインキャラクターの性格、どういう行動をしたかについて

「デクのどんなに無理だと言われても諦めきれずに夢へ向かって頑張るところ」
「園長の行動理念である、面白いことしかしないというのはわかりやすかった」

など書かれていた。
疑問に感じた点のコメントでは「僕のヒーローアカデミア」で11人中5人、「逢魔ケ刻動物園」では11人中7人が回答していた。

内容では、「僕のヒーローアカデミア」は

「個性にどれくらいの種類があるのか」

など世界観に関する質問が3つ、その他は

「なぜ幼馴染の子は主人公をいじめているのか」
「その他ヒーローの行動は、売名活動のような印象だった」

というキャラクターに対する疑問が2つだった。一方「逢魔ケ刻動物園」では

「なぜ飼育員だけに任せっぱなしなのか」
「他の動物たちの変身後の姿や性格がよく覚えてなかった」
「主人公の行動理念もわかりやすいのだが、背景となる部分の説明が薄く、受け入れにくかった」

など、7つの回答すべてがキャラクターに対する疑問であった。うち、4つがメインキャラクターである主人公・蒼井華と園長・椎名についてであった。
上記の結果を踏まえると、「逢魔ケ刻動物園」では「僕のヒーローアカデミア」と比べて、メインキャラクターの行動に対して読者が理解できていない部分が多かったと言える。

「③キャラクターの欲求は強かったですか?」では0.7ptと、やや差がついた。
強く感じた点へのコメントでは「僕のヒーローアカデミア」は11人中8人、「逢魔ケ刻動物園」は11人中10人が主人公の思いについて

「デクのヒーローへのあこがれ」
「主人公ハナの変わりたいという思い。」

などコメントしていた。
一方あまり強く感じなかった点として、「僕のヒーローアカデミア」は4人、「逢魔ケ刻動物園」では6人が回答していた。

「僕のヒーローアカデミア」の内容は

「オールマイトと出久以外はよくわからなかった」
「他のクラスメートの個性」
「悪役がなぜ暴れているのかがあまりわからなかった」

などメインキャラクター以外についてであった。

「逢魔ケ刻動物園」に対してのコメントは

「兎人間椎名の目的」
「変えたいという意思は強いが、まだ流されてさせられている所が大きいのかなと思います。」
「悪役の動機や感情」

というキャラクターに対する疑問が2つだった。

一方「逢魔ケ刻動物園」では

「なぜ飼育員だけに任せっぱなしなのか」
「他の動物たちの変身後の姿や性格がよく覚えてなかった」
「主人公の行動理念もわかりやすいのだが、背景となる部分の説明が薄く、受け入れにくかった」

などで、メインキャラクターに対するコメントが4つ、その他の悪役や動物に対するコメントが2つであった。
「僕のヒーローアカデミア」ではメインキャラクターについて欲求を強く感じなかった点が書かれていなかったことを踏まえると、「逢魔ケ刻動物園」では「僕のヒーローアカデミア」と比べて、メインキャラクターの欲求を読者が強くは感じづらかったと言える。

「④キャラクターに感情移入できたシーンはどのくらいありましたか?」の質問は0.6pt差で、やや差がついた。
感情移入できたシーンについては、どちらも同じくらい、

「ヒーローに対する憧れ。」
「主人公がお前が必要じゃと言われたシーン」

など主に主人公の感情の動きに沿うコメントが書かれていた。
感情移入しづらかったシーンについては、「僕のヒーローアカデミア」では4人、「逢魔ケ刻動物園」では7人が回答していた。

「僕のヒーローアカデミア」の内容は

「他のヒーローが出てくるシーン」
「幼馴染の同級生に来世〜の冗談を言われたときのキレ方」

などで、メインキャラクターに対するものが1つ、その他が3つであった。

一方「逢魔ケ刻動物園」では

「主人公の行動全般」
「全体的に。単純明快な主張の勢いが強すぎる。」
「園長の自己中行動全般」

などがあり、メインキャラクターに対するものが6つ、その他1つであった。
「僕のヒーローアカデミア」ではメインキャラクターについて感情移入しづらいという言及が1つだけに対し「逢魔ケ刻動物園」では6つあったことを踏まえると、「逢魔ケ刻動物園」では「僕のヒーローアカデミア」と比べて、メインキャラクターに感情移入しづらかった言える。

「⑤キャラクターに対して好感が持てましたか?」の質問では、1ptの差がついた。
好感が持てた点では、「僕のヒーローアカデミア」は11人中8人、「逢魔ケ刻動物園」は11人中10人が

「主人公がはっきり夢を持っているところ、強いヒーローにも弱点があるところ」
「逃げたいけど変わりたいそんな主人公の気持ちに感情を動かされました。」

など、メインキャラクターのエピソードに対してコメントしていた。

一方好感が持てなかった点として、「逢魔ケ刻動物園」では

「兎人間が怖い」
「分かりやすすぎる。」
「同級生達に否定されるシーン」

など8つのコメントがあり、うち5つが園長・椎名や主人公・蒼井華を挙げていた。
「僕のヒーローアカデミア」では好感を持てなかった点にコメントしていたのは3人で、その人物は主人公をいじめる幼馴染・爆豪勝己のみだった。
また、「逢魔ケ刻動物園」のメインキャラクターに対するコメントは賛否が半々ほどだったのに対し、「僕のヒーローアカデミア」のメインキャラクターである主人公・緑谷出久と憧れのヒーロー・オールマイトへの否定意見は全く無かった。
「僕のヒーローアカデミア」では主人公・緑谷出久に暴力的な描写も自己中心的という性格もなく、一般人の目線で応援しやすいキャラクターである。

印象に残った点へのコメントで

「主人公がいじめられっ子で、幼馴染がいじめっ子」
「デクの挫折と、かっちゃんのためにヴィランに向かって走り出したところ」

などがあり、むしろ弱い立場のキャラクターとして読者の興味を誘っている。
また、一貫してヒーローになりたいという欲求に基づいて行動しており、

「デクのどんなに無理だと言われても諦めきれずに夢へ向かって頑張るところ」
「ヒーローに憧れ過ぎてオールマートにしがみついた」

などが、キャラクターの行動がわかりやすかった点として挙げられていた。
欲求の強さに関しては、

「オールマイトの、人を助けるという行動と出久の人を助けたいという欲求がうまくマッチしていて、出久の欲求がより強く感じた」
「主人公の感情表現が、主人公の境遇と合致している。」

などのコメントがあった。主人公の感情表現や他キャラクターとのやり取りを通して強い思いを感じることで、キャラクターの好印象に結びつきやすかったのではないか。

「⑥このマンガをもっと読みたいと思いましたか?」の質問では、「逢魔ケ刻動物園」で

「主人公の今後はあまり期待できない印象だった」

というコメントや「僕のヒーローアカデミア」で

「どうやってヒーローになるんだろうという期待感 個性に種類が豊富そうで面白そう」

で「期待」という言葉が使われていた。 「僕のヒーローアカデミア」へのもっと読みたいと思ったコメントで

「出久がこのあとどうなっていくのか見てみたい オールマイトの今後が見たい」
「主人公のこの先が気になる」
「これからどうなるか、解らない 個性がなくとも本当にヒーローになれるのか」
「主人公の成長を見届けたい」

など、主人公や仲間の今後についての言及が多かったことも踏まえると、作品のメインキャラクターへの印象や、今後キャラクターが何をするのかという「キャラクターへの期待感」が、漫画をもっと読みたいと思うかに大きく影響している可能性がある。
「僕のヒーローアカデミア」のもっと読みたいと思った点のコメントでは、11人中5人が、無個性の主人公がどうやってヒーローになるのか、主人公の今後が気になるという趣旨のコメントをしていた。
一方、「逢魔ケ刻動物園」ではコメントの数は「僕のヒーローアカデミア」と同数だったものの「普通に面白いと思う」など抽象的な答えが多く、具体的に気になる理由を述べたものは1つのみで、「動物たちをもっと見たい」であった。

◎視線の分析

視線の計測ではキャラクターに一番視線が集まりやすかったことを踏まえ、「キャラクターを気になる状態にさせること」が重要であると考える。特に「逢魔ケ刻動物園」の園長・椎名と「僕のヒーローアカデミア」のオールマイトには初登場シーンから、他のキャラクターよりも視線が集まっていた。どちらも見た目のインパクト(椎名はウサギ人間、オールマイトは画風が違う)があり、そのような人物に自然と視線が集まりやすい可能性がある。

キャラクターの行動原理がわかるシーンでよく見られていたのは、「逢魔ケ刻動物園」の園長・椎名が人間だったのに、なぜウサギの姿なってしまったのかという呪いの説明シーンと、「僕のヒーローアカデミア」のオールマイトがガリガリになってしまう理由(過去)が説明されたときであった。驚きがあり、その理由が明かされる際に単純に気になる可能性と、そもそもキャラクターのメタモルフォーゼや過去の話が興味をそそる可能性もある。また、キャラクター(特に主人公)がモノローグで心の内を語っている部分も、じっくりと読んでいる人が多かった。読者は、主人公の考えや感情ををきちんと理解しようと読んでいると考えられる。
前述した変則的なコマは「逢魔ケ刻動物園」に多く、同作に読み返しが多かった。断定はできないが、読者が読む順番を迷っている可能性がある。

他に興味深い点としては、2作品を比べた際に、全体的に「逢魔ケ刻動物園」のほうが一定のスピードで、視線があまり止まることなく読まれていた。「僕のヒーローアカデミア」のほうが、視線がところどころで止まりやすく、読むスピードが変則的だった。印象に残るシーンの多さにおいてヒーローアカデミアが高スコアだということを考えると、印象に残るときは読者は目をしっかり止めて読んでいる可能性がある。

検証結果と今後の課題

今回の実験で、キャラクターの好感度と、続きをもっと読みたい気持ちの点で差が出やすいことがわかった。キャラクターの印象と巻数の関連はありそうだが、まだ2作品の比較では可能性の話にとどまるため、さらに検証していく必要がある。 今後はもっと漫画の種類を増やして実験を重ねて、仮説やアンケートを修正しながらさらに実験を繰り返す。 2018年中にはさらに20人ほどのサンプルを計測し、スポーツ漫画やギャグ漫画においてどんな結果が得られるか検証する。

結論

現時点の結論として、
アンケート結果から、長期連載には「キャラクターの好感」「もっと読みたいと感じること」が重要。次に、「キャラクターへの感情移入度」「キャラクターの欲求を強く感じること」が重要といえる。
視線の計測から、読者が視線を止める部分が多いほど印象に多く残っている可能性がある。
よく目が止まるのが「キャラクターがリアクションしたとき(感情がわかるとき)」「キャラクターの行動原理がわかるとき(過去の話や、モノローグなどで考えがわかるとき)」ということを鑑みて、このようなシーンを多く用意すれば読者の印象に残りやすい可能性がある。